ウチの親が「オレオレ詐欺」に引っかかりそうになりました。

2013年11月



ウチの親が「オレオレ詐欺」に引っかかりそうになりました。
その時の様子を以下に書きますので、高齢の親御さんをお持ちの方、どうぞ参考にしてください。

夜9時過ぎ、ひどい声で「弟」の名前をかたる男から電話がかかってきます。

男 「○○だけど、風邪引いちゃって・・・。」
母 「大丈夫かい?」
男 「明日、家に帰っても良いかな?」
母 「良いよ、そんなに悪いの?」
男 「うん大丈夫。でも明日、医者に行こうと思うんだ。
   内科と耳鼻咽喉科、どっちが良いのかな?」
母 「とりあえず内科に行けば良いんじゃない?」
男 「じゃあそうする。」
母 「温かくして、早く寝るんだよ。」
男 「わかった。あ、それから・・・」
母 「なぁに?」
男 「携帯をトイレに落としちゃって、修理中なんだ。仮の番号は○○○○だから。」
母 「あぁ、分かったよ。」

ずいぶん長く話していましたが、内容はこんな感じ。
ここで一旦電話を切ります。

脇で聴いていた自分にも何となく話の内容が聞こえてきました。
そして思ったのは、なんかおかしくない?それって詐欺の手口じゃない?って事です。
しかし、「詐欺だ」と言い切るだけの証拠はありません。
そこで母親に声をかけます。

「怪しいから気をつけて。詐欺の常套手段だよ。」
「でも、確かに風邪を引いたときの○○の声だから。」

既に、電話の相手は風邪を引いた弟と信じています。
端から見れば「バカじゃねぇの?」と思ってしまいますが、その気持ちは分からないでもありません。
ソレなりに長い時間、あーだこーだと色々話し、どうしたらいいかとアドバイスを求め、しかも気弱に助けを求めてくるのです。
疑いよりも息子を思う心配の方が大きくなっても無理はありません。

しかしあまりにも疑わないので、「修理中」と言っていた番号に電話をかけてみるよう言いました。

ところから、古い番号には電話が繋がらないのです。
メッセージの内容は、繋げられないとかなんとか・・・。
母親がかけたので詳しい内容は分かりませんが、とにかく電話が繋がらないのです。

「ほら、修理中だから電話が繋がらない。」
残念なことに、この確認の電話で「弟」だと言う男の信憑性が増してしまいました。

さぁ、母親は心配でなりません。
声が分からないくらいに変わり、病院へ行こうかどうしようか迷っている。
もし何もしなかったらもっと病状がひどくなり、動けなくなってしまうのではないか。
さらには、夜中に死んでしまうのではないか。。。(大げさ!でも、本当にそう思っています)
悪いことが頭の中に渦巻き、居ても立ってもいられません。
すぐに新しい番号に電話をかけます。

・・・が、新しい番号にも電話はつながりません。
ただし、今度は話し中で繋がらないのです。
話し中だから何回かかけていれば・・・繋がりました。

母 「良かった。ずっと話し中だからどうしたのかと思った。」
男 「あぁ。。。今、明日の病院の予約をしていたんだ。」
母 「さっきより少し声が良くなったね?」
男 「うん・・・ハチミツを塗ったんだ。」
母 「あぁ、そうかい。あまりにも体調が悪かったら、救急車を呼ぶんだよ!」
男 「わかった、そうする。」

ここで父親に電話を替わります。

父 「おい○○、大丈夫か?」
男 「うん、大丈夫。」
父 「声が全然違うぞ?」
男 「風邪がひどくてね。熱はないけど、のどが腫れているんだ。」
父 「うん・・・そうか。。。」

父親は疑ってはいますが、本人かどうか決めかねているようです。
しかし、母親のようには信じていないのが分かります。

その後も一度、古い番号に電話をかけてみましたが、繋がらないのは同じです。
ここで、その日の電話は終わりました。

後で気がついたのですが、母親がこちらからかけていた電話は、全て自分の携帯電話からかけていました。
もし詐欺だった場合、後でちょっと面倒だな・・・と思いましたが、かけてしまったものは仕方がありません。
そのことには触れずにその場は終わりました。



母親は明日の準備を始めました。
自分が行って、看病しなければいけない。
何を持っていくか考えて用意して、それからあれと、あれを買って・・・。
もう、弟が死んでしまうことしか考えていないのです。
たかが風邪なのに、喉が腫れているだけなのに、ちょっと大げさ過ぎやしませんか?




さて翌朝、ずいぶん早い時間に物音で目が覚めました。
耳を澄ますと、母親が階下で動いている様子。
弟の事が心配で、きっと寝られなかったのでしょう。(事実、寝られなかったらしい)

支度をしてリビングに降りると、既に父親しかいませんでした。
なんでも、弟の所へ看病に行くため、買い出しに行ったとのこと。
朝早くから、いったい何をやっているんでしょう。。。



朝食を食べ、店を開けるために階下へ。
そしてしばらくすると、電話がかかってきました。
昨日の「弟」からです。
母親はいないので、今回は父親が電話に出ました。

男 「○○だけど。」
父 「あぁ、どうだ?」
男 「病院に行ってきた。扁桃腺が腫れているって。」
父 「あぁ、そうか。」
男 「薬を塗ってもらった。それから、抗生物質をもらってきたよ。」
父 「そうか、気をつけないといけないぞ。」
男 「うん・・・今日は、これから弁護士の所へ行かなきゃいけないんだ。」
父 「どうしたんだ?」
男 「う・・・ん、ちょっとね。」
父 「なんだよ。何かしたのか?」
男 「いや、別に。。。」
父 「何をしたんだよ?」
男 「実は、東京オリンピック関連の投資をしたんだけど、失敗しちゃって。」
父 「投資って何だよ?」
男 「株をね、ちょっとやったんだけど、お金が足りなくなっちゃって。」
父 「いくら足りないんだよ。」
男 「う・・・ん、まぁ・・・弁護士に相談して、少し戻ってくるらしいんだけど。」
父 「いくらなんだよ?」

父親の口調が、今までと違うことがハッキリと分かりました。
どうやら父親の頭の中には「詐欺」のフラグが立ったようです。
それはそうです。昨日の怪しい電話の後に、今朝の金の無心を臭わす電話。
電話の相手をそれほど信じていなかった父親が、「こいつは詐欺に違いない」と思ったとしても、それは当然のことでしょう。

確証を得るため、父親は昨日から考えていた言葉をその男に投げかけました。

父 「おい○○、家族の名前を全部言ってみろ。
男 「!・・・」 プツッ・・・

終了!

・・・なんとも、あっけない幕切れ。

その後は「古い携帯番号」の弟に電話をかけ、今回の男が「詐欺」であることを確認し、
出かけていた母親に電話をかけて詐欺であったことを報告し、
さらには、本当の弟から母親に電話が入ってコンコンと偉そうな講釈が始まり、
そして、相手に知られてしまった母親の携帯電話は番号変更の手続きをすることとなりました。



今回の詐欺電話では、金銭的被害が出るような詐欺事件にも、詐欺未遂事件にもなりませんでした。
強いて言うならば、看病に行くために買ったリンゴ、イチゴ、すり下ろし器、まな板が無駄になったくらいでしょうか。
・・・いや、これは被害と言うよりも、古くなった日用品が新しくなって、リンゴとイチゴが食べられたから良いことなのかな?

しかし、良い勉強になった事は確かです。
今まで「オレオレ詐欺」は、判断が鈍くなったお年寄りが引っかかる物だと思っていました。
しかし今回の電話で、老人だろうが若者だろうが、引っかかる時は引っかかるだろうと感じました。
事実、自分は年寄りではありませんが、「変だ」とは思っても「詐欺だ!」と言い切ることは出来なかったのです。
これが、物事の判断がゆっくりになったお年寄りだったら、すぐにテンパってしまう性格の人だったら、最初の「風邪を引いて・・・」の電話で慌ててしまい「息子」と信じてしまったら、後は疑うことは出来ないでしょう。
途中で一息入れて考えることが出来れば良いのですが、それが出来ないぐらい慌ててしまったら、後は話の進め方でどうにでも出来てしまいます。
「弁護士が行くから」とか「警察官が行くから」と言えば、本人でなくてもお金を渡してしまうでしょう。
弁護士や警察官なんか、ソレっぽいバッチや偽の身分証明書、それらしい格好をしていれば良いんですから。

では、どうやったら被害を防げるか。
変な電話がかかってきたらコチラの情報は言わないのは当然として、やはり本人しか知り得ない事を質問して本人確認をするのが良いのではないでしょうか。
そう考えると、今回の父親の対応は感心しました。
正に本人しか知り得ない情報です。
これを読まれた方も機会があれば(無い方が良いですが)是非活用していただきたいと思います。

父親が質問した本人しか知り得ない情報、それは

「家族の名前を言ってみろ」


これです。
ジジイとは思えない、すばらしい発想の質問でした。(笑

(勿論、他にもレパートリーを増やしておくと良いですね。)
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